世界屈指のIT系学生を育てる鳥羽の教授が 若者獲得&教育法と最新IoTを解説します!


Microsoftが開催する世界的なITコンテスト『Imagine Cup』。
日本代表として出場したチームの中には、三重県発の『ezaki-lab』がありました。
ezaki-lab』とは鳥羽商船高等専門学校・江崎修央教授の元で学ぶ学生達。
「我が校より偏差値が高い学校は幾らでもありますよ」としながらも、江崎先生は世界の舞台で活躍できる学生を育てています。
卒業生の就職先は、誰もが知るような日本のものづくり&エネルギー企業。
一方で、心潤う生活を求めて地元で働きたいという学生もいます。

▲世界大会出場の様子(Microsoft Image Cup)

ICT・IoTの最前線で学生を指導する江崎先生が、三重県の企業経営者を対象に、若い人材獲得のポイントや、ものづくり企業のIoT化について語って下さいます。
講演に先がけ本事業用Webサイト(https://mie-iot.com)では、江崎修央先生の取り組みをご紹介。特に人口減少が著しい農山漁村でのAI活用事例は、人手不足に悩む多くの経営者にとってヒントになるはず。
当日の講演内容とは異なりますが、講演をより深く理解するための予備資料としてお役立て下さい。

江崎修央教授講演会
10月30日(水)13:00〜 ※講演後ハンズオン講座あり
会場/NTNシティホール(桑名市)


【講演者PROFILE 】
江崎修央
独立行政法人鳥羽商船高等専門学校
校長補佐・研究主事・テクノセンター長
情報機械システム工学科
学科長・教授

三重県鳥羽市生まれ。鳥羽商船高等専門学校を卒業後、豊橋技術科学大学博士課程修了。オークマ株式会社電装事業部ソフトウエア開発課に就職。1998年より鳥羽商船高等専門学校にて教鞭をとる。2001年度より校外のプログラミングコンテストへ参加し、指導学生は数々の賞を受賞。近年は、農業や水産業など情報システムが導入されていない領域でのシステム構築・運用に関する研究に取り組む。

鳥羽商船高等専門学校
創設/1881年
三重県鳥羽市池上町1-1 

鳥羽商船高等専門学校・情報機械システム工学科の特色

▲ ezaki-labの様子

1年生から5年生まで全学年縦断型のチームを編成。地域課題をチームで解決するPBL(問題解決型学習/Project Based Learning)で学生を育む。具体的な授業内容は「先生が教えるのではなく、『調べてよ』『先輩に聞いてよ』と学生達には言っています」と江崎先生。PBLを通じ学生は①三重の地域産業や文化を理解し、②チームで工学的解決に取り組み、③その提案・発表方法を身につける。さらに成果を学外のコンテストで発表するミッションも。多くの学生はPBLの授業で刺激を受け、自信をつけるそう。また数々の賞に輝いてきた。「若い彼らから出てくるアイデアは時に新鮮で柔軟。教師が教えられるキャパを超えていると感じます」。これまでに学生が解決した地域課題は、子どもの学芸会に役立つ楽しいものから、産業の発展や防災を支えるものまで多彩

これまでに学生が開発したプログラム

講演ではもっと多彩なプログラムをご紹介します。お楽しみに!

IoTによる檻罠の遠隔監視・操作システム
『まるみえホカクン』

害獣(サル・シカ・イノシシ)を捕獲する檻を、スマホで遠隔監視・操作できるIoTシステム。カメラ映像をスマホで見ながら、檻の開け閉めを遠隔操作する仕組みで2012年に商品化。機能は年々改良を重ね、現在は「全自動で」害獣を檻に誘引・捕獲できるようになった。システムは現在、全国300カ所以上の里山で稼働している。

養殖魚のAI自動給餌システム『EFFECT』

養殖魚を、納期に合わせて任意のサイズに育てる試み。養殖場にカメラを設置し、エサの食いつき具合をAIが解析&学習。自動で給餌⇄停止する。さらに「潮の満ち引き」「適切なエサ時間と量」も加味。エサのロスや給餌の手間を減らし、漁師の負担を軽減する。このシステムは、Microsoft主催の学生ITコンテスト『Imagine Cup』日本大会で優秀賞を受賞。世界大会に進出した。現在は南伊勢町のほか、世界のどこかの海で?! 20基が稼働中。

学芸会を盛り上げる『素敵な劇しまSHOW』

ステージ上に任意の映像(スポットライト、手描きの絵など)を投影。演者の動きに合わせて映像を出現・追従させる。ポイントは児童でも使える簡単操作。広く普及している『Microsoft PowerPoint』で操作できるように工夫した。小学1年生でも操作できることを実証し、担任教員からも「この程度なら無理なく教えられる」と好評だった。

中小企業経営者のためのQ&A
〜IT人材を育てる江崎修央先生に聞いてみました〜

Q.会社IoT化の個別相談も可能?
A.企業の問題解決に取り組むこともあります。

企業秘密保持のため発表する機会はありませんが、実際に企業内の課題解決に取り組むこともあります。その場合、①課題が既に分かっている場合、②問題を見つけ出す所から、それぞれに対し客観的な意見をお話できると思います。

ただし、こちらの意見を伝えても、全く理解していただけないことも。特に“今のやり方のままIoT化して効率UPしたい”といったご要望には、期待に添えないかもしれません。
IoT化というのは、仕入から出荷までの全てが“ネットワークに繋がった何か”に置き換わる、という考え方。部分的にIoT化しようとすれば無理が生じます。「今のやり方なんて全部捨てちゃえ」と、私だったら考えちゃう。
 例えば、ある魚市場の様子です。収穫した魚の重さを測り、紙に書き、それを事務所に持っていきExcelに入力、プリントアウトしてFAXで送信しています。「むむ?」と思いませんか? もしBluetoothの台秤をiPadに繋げて使ったら……。入力の手間も、印刷の手間も、FAXの手間もかからないのにね。
こんな風に、IoT化のためには抜本的な改革が必要です。昔の方法にしがみついて「AIやIoTは自分が理解できないからダメだ!」などと言っていては何も起こりません。
IoTやAIは業務をスリム化する魔法ではありません。大切なのは、①課題を解決したいという確固たる意思があるか、②新しいものに拒絶反応がないか、③分からないことを「任せた!」と部下に言えるかどうかではないでしょうか。

Q.優秀な学生は都会の大企業志向では?
A.ふるさと三重で働きたい学生も。
彼らは “面白い仕事”や“安らぎの暮らし”を望んでいます。

都会を謳歌して結婚し、我が子を授かり、習い事に通わせたら、年収が幾らあっても足りないような(苦笑)。一方地元では、都会と違った生活が送れますよね。伸び伸びとして潤いのある暮らし。卒業生の中には、地元で就職する子もいれば、グローバル企業に就職して地元配属を志望した子、経験を積みUターンで帰って来た子などさまざまです。これからは地方創生や一次産業のIoT化の動きが一層盛んになるはず。仕事の選択肢は増え、面白い仕事を求め地元に留まりたい若者が増えるのでは。

いまどきの子は慎重派。つまりビビリが多く、“先輩が働いている会社”を志望する子が多いと感じます。OB・OGが働いている会社なら安心。インターンシップを迎えている会社も同様に、入社前に会社を知って安心できます。反対に、中が見えないブラックボックスの会社に入るのはこわい。入社するなら仕事が楽しく、社内の人間関係が良好な所がいい。これは学生に限らず誰もが言えることです。
 未熟な学生でもアルバイトで雇ってもらえたら、彼らの視野や就職の選択肢が広がり、私達教員も助かります。彼らは若いから何でも吸収します。どんな仕事でも与えてもらいたい。でも “配膳だけ”“配達だけ”の仕事では、ITを学ぶ彼らはやり甲斐を見出せないんです。

Q. IT人材で会社は変わる?
A.1人でも変われます。ただし環境次第。

たった1人のIT人材を雇うだけで、会社は変わると思います。試しにうちの学生をバイトで雇ってみたらよく分かりますよ。IoTやAIは今後、職人の勘を凌駕する可能性を秘めています。例えば学生が作った養殖魚のAI自動給餌システム『EFFECT』は、条件さえ整えば近いうちに自動養殖ができる可能性があります。それはつまり、未経験者でも明日から魚を養殖できるということ。ただし現実には問題があって、台風や地震など自然には及びません。
教師として長年学生を見ていて思うのは、どんな時代でも学生はチャンスが与えられれば伸びます。学生が会社に入り「何を言っても無駄だ」と思えば、だんだん何も言わなくなります。若い子の力を上手に使っているなぁと思うのは『ゑびや』さん。あそこのリーダー(小田島春樹社長)は何にせよ『絶対できる』と思っていて、どう実現するかをポジティブに考えているご様子。IT人材が開花するかどうかは、組織のリーダーが鍵を握っています。
(取材/2019年8月)

10/30(水)桑名にて開催!【申込受付中】

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