IoT活用で日本の農業をスマートに変革! ダイバーシティ経営とともに講演で解説します 。

スマート農業と育種研究で日本の第一線を走る、ハイテク農業カンパニー。

ハウス内で美しく連なるミニトマトを見ると、トマト栽培を知る誰もが驚くといいます。
浅井農園はスマート農業と育種研究で日本の第一線を走る、ハイテク農業カンパニー。
IoTによる環境制御、ロボット、AIなどを組み合わせ、甘いミニトマトを科学的に生産しています。
近年では辻製油、三井物産、デンソーなどの名だたる企業と連携し、世界と肩を並べる大規模施設園芸も好調。
2018年には最先端農業モデルの視察として、安倍総理が浅井農園を訪れました。
「10年ほど前までは家族農業で先細り、経営は大ピンチ。トマト栽培は全くの未経験でした」と振り返る浅井社長。

従来の農業イメージを刷新する浅井社長が、三重県の中小企業経営者を対象に最新栽培法やIoT導入について語って下さいます。
講演に先がけ本事業用Webサイトでは、浅井農園の歩みをご紹介。ダイバーシティー(多様性)経営で新たなチャンスを見出す手法は、農業経営者のみならず、あらゆる中小企業のヒントになるはず。
当日の講演内容とは若干異なりますが、講演をより深く理解するための予備資料としてお役立て下さい。

浅井雄一郎社長講演会2020年1月15日(金)13:30〜 会場/浅井農園 

【講演者PROFILE 】
浅井雄一郎
株式会社浅井農園 代表取締役

1980年生まれ。大学卒業後、経営コンサルティング会社等を経て、三重県津市にある家業(花木生産)を継承し、第二創業として2008年よりミニトマトの生産を開始。品種開発〜生産管理〜加工流通まで独自の農業バリューチェーンを構築しながら生産規模拡大に取り組み、国内トップクラスの農業生産法人に成長。2013年に辻製油および三井物産との合弁会社「うれし野アグリ」、2018年にデンソーとの合弁会社「アグリッド」を設立し、農商工連携により次世代型農業のモデル構築に挑戦している。

株式会社浅井農園
創業/1907年
社員数/80名
三重県津市高野尾町4951番地

甘い実を効率生産する環境制御IoT

ミニトマトのハウス栽培を、日本の在来農法ではなくオランダの施設栽培モデルに基づき実践。ハウス内の環境(温度・湿度・二酸化炭素など)をセンサーで“見える化”し、コンピューターで適正に制御する。甘いトマトを多く生産するために独自で研究を重ね、光合成の最大化と植物体のエネルギー分配について最適化を導き出す。現在は1,000㎡あたり28.7tのミニトマトを生産中(※この収量の多さはミニトマトにおける日本記録)。将来はAIを活用し三重と海外の農場を結びリモート栽培する夢も。

『浅井農園』IoT農業への歩み

1907年 (明治40年)創業
戦後〜 三重サツキの生産・卸を営む
三重サツキは公共緑化樹。バブル崩壊から受注が激減した。
1975年 株式会社浅井農園を設立
2007年 雄一郎氏(現社長)、洋平氏(現専務)が浅井農園の取締役に
売上はピーク時の1/10以下。家業立て直しのため兄弟で奮起。
2008年 ミニトマト生産で第二創業
新ハウスを建てセンシング農業に取り組む。スタート時は家族農業で、トマト栽培経験者は近隣にもいなかった。ハウス建設にあたり世界中の栽培を研究。オランダのセンシング装置を導入し、ハウス内環境の“見える化”に取り組んだ。
2010年 スタッフ皆で大学・研究所に通い学びを深める
当時の社員は6〜7人。農学に精通した人、またはトマト栽培技術に長けた経験者はまだいなかった。
2013年 うれし野アグリ株式会社を設立
オランダ人の農業コンサルタントと契約。
2014年 海外出身の農学博士が入社
自社研究棟が完成。研究開発型農業へと舵切り植物の生長をメジャーではなくカメラで測るなど、ICT栽培を一層深める。国の委託研究プロジェクトや大学との共同研究にも注力。浅井社長はこの年を「第2転機期」と振り返る。
2017年 本社新社屋が完成
2018年 株式会社アグリッドを設立
2019年 ゼスプリ社と提携し玉城町でキウイの生産を開始
福島県南相馬市のトマト農場と技術連携。農業復興を手伝う。

Talk about『浅井農園』インタビュー

お話/代表取締役 浅井雄一郎さん

家業再生のためのミニトマト栽培
データが残る“環境制御”に賭けた

家業は公共緑化樹・三重サツキの生産・卸で、僕は5代目です。以前は近隣に400軒ほどあったサツキ農家は、今や十数軒に。家は卸もしていたので倉庫・重機の減価償却や借金を抱え、経営は大ピンチでした。
 2008年に東京から帰郷する途中で、3ヵ月ほど知人の新規事業のミニトマト栽培を手伝うことに。とても美味しいミニトマトに可能性を感じ、すがる思いで選んだのがミニトマト栽培です。家の苗木用ハウス400㎡を、トマト用に作り替えました。柱のサビを落とし、ペンキを塗って、決意の印に柱の色をトマトの赤色に塗りました。だけど植物の光合成を促すには赤色じゃダメなんですね。そんな事も知らないくらい当時は栽培の素人でした。

ビギナーズラックで美味しいミニトマトが出来ました。父のお客様(生鮮食品店の経営者)の元へ持っていったら「幾らでも買ったるから、沢山作りや」と激励していただいたことが原動力に。借金して、ハウスを建てることにしました。ハウス面積は3,700㎡です。
 建設にあたり、世界中のハウス農業を徹底的に調べました。その時にオランダの栽培方法に出会いました。コンピューターでハウス内の環境を制御する画期的な方法。素人ながら “これからは、これだ!”と直感的に思いました。温度・湿度・二酸化炭素をセンサーで測り、コンピューターで制御するセンシング栽培。人間が寝ている間にも環境を適正に保ってくれます。加えてデータが残ります。僕は栽培の素人だったので、何をしたら良いのか悪いのか分からない。データがあれば栽培環境が“見える化”され、新しい手を試し、結果をデータで照合できます。そんな改善を11年積み重ね今に至ります。

IoTセンシング農家から
研究開発型カンパニーへ

初年度に甘いトマトが出来ましたが、収穫量は1,000㎡あたり7トンと現在の1/4ほど。結果は赤字でした。2年ほど赤字が続き、親父はビビったと思いますよ「ウチ潰れるんちゃうか?」と。参考にしたのはオランダの教科書と蓄積されていくデータだけ。赤字続きでしたが収量は年々上がり、データを基にしている分確かな手応えがありました。
 僕が30歳の時(2010年)、三重大学で産学連携に取り組む西村訓弘先生に誘われ、入学することに(地域イノベーション学研究科)。やがてスタッフも連れて大学に通い、植物制御の授業をしてもらうようになりました。もう皆、知りたいことだらけ。ラッキーなことに国立(現・独立行政法人)の野菜茶業研究所も近所にあり、そこでも色々と助言をいただきました。

経営が安定した6年前には(2013年)、オランダの農業コンサルタント会社と契約。いよいよオランダ流の核心を知ることができる、大きな飛躍です。2014年には中国出身の農業博士・呉婷婷さんが入社、同じ年には研究棟も完成しました。
 条件が揃い、植物の基礎研究にも取り組むことに。生育調査で使うのはメジャーではなく、無人で動き続けるIoTカメラやセンサーです。画像解析による生育スケルトンやクロロフィル蛍光測定、植物体を覆うチャンバーを用いた光合成のセンサー計測など。光合成や光合成産物の分配をも“見える化”しました。

そんな今、ちょうどAI時代が来ました。センサーもカメラも今は随分と安くなりました。それに加えてうちには10余年分のデータがあります。これは大きな強みだと自負しています。

ダイバーシティ(多様性)採用で
色々な個性が輝き仕事に活きる

僕一人から始めたトマト栽培。1人でできることなんか限られている、だから組織で農業した方が強いはずだっていうのが僕のスタイルでした。1人目の社員は、最初のハウスを建てたころに来てくれた野村さん。僕が手作りしたホームページを見て入社してくれました。以降は毎年2〜3人ずつ採用しています。当時の僕達は“人を選ぶ”なんて立場じゃありません。敢えて採用基準を挙げるなら、素直な方、植物が好きな方。経験者の方は逆に難しいだろうと思っていました。日本の教科書と全然違うことをやっていたので。

初めての外国人社員は2014年に入社してくれた呉さん。現在うちで働く外国人の方は(グループ会社含む)、ベルギー、スウェーデン、スペイン、ネパール、インドネシア、中国、ニュージーランド、アメリカ(ハワイ)など、多国籍集団になりました。皆が農学に特化しているわけではありません。そんな人はそうそう見つかりません。
色々な人と働くと、自分の視野が狭かったことに気づきます。それを教えてくれたのは、外国人社員1号の呉さん。そのほか障がいがある方や、子育て中の方、とにかく色々な方がいます。先日は社員旅行でキャンプをして皆で力を合わせました。社長だからと偉ぶらないよう心がけ社員と接しています。社内に上下関係のムードはなく、皆が謙虚な研究魂を持ってくれています。
 会社やハウスはただのハコであり、そのハコを通じて社員のみんながどんな価値をアウトプットするのか、どう豊かになるのかが重要だと考えています。皆様の会社はどんなハコでしょうか。ご自分のハコを客観視できていますでしょうか?

special topics
社員はこう見る『うちの社長』

流通開発部/寺岡 良之さん

 僕の前職はスポーツインストラクターと新規入会者の勧誘。農産品の営業をするのは初めてでしたが、ここで栽培の様子を見て「こんなトマト見たことない! 自信を持って売れる!」と思いました。これまでの職場と違うところは、営業成績のグラフが貼り出されていないことと、どんな結果でも詰められないこと。新しいプロジェクトが次々と降ってきて、走りながら成長できる実感があります。任されたのだから勉強しなきゃ、と。社長室ができたのはつい先日のこと。それまではフリーアドレスデスクで、社長はフラっと来て隣に座ってました。社長も含め、色んな社員に自分の声が届きやすいです。お互いの声が届きやすいと思います。
(取材/2019年9月)